相対評価と絶対評価の違いとは?自社に合う人事評価制度の選び方を解説
相対評価と絶対評価は、どちらも人事評価の手法ですが、評価の基準が異なります。
相対評価は他者との比較で評価が決まるのに対し、絶対評価は個人の目標達成度で評価が決まります。
この記事では、両者の違いやメリット・デメリットを詳しく解説し、自社に最適な評価制度を選ぶためのポイントを紹介します。
なぜ今、人事評価制度の見直しが必要なのか?
多くの企業で長年運用されてきた人事評価制度が、なぜ今見直しの時期を迎えているのでしょうか?その背景には、社会環境の変化や働き手の意識の変化が大きく関わっています。ここでは、現代の企業が直面している課題と、評価制度の見直しが必要とされる主な理由について解説します。
働き方の多様化に対応する必要がある
近年、テレワークの普及や副業の解禁など、働き方は急速に多様化しています。以前のように全員が同じオフィスで同じ時間を共有し、上司が部下の働きぶりを目視で確認できる環境ではなくなりつつあるのが現状です。このような状況下では、単に長時間働いたことや、目に見える頑張りだけを評価する従来の制度では限界が生じてきます。成果やプロセスをより客観的に、かつ柔軟に評価できる仕組みへの転換が求められているのです。
従業員のエンゲージメント向上が急務
企業が持続的に成長するためには、従業員のエンゲージメント、つまり会社への愛着や貢献意欲を高めることが欠かせません。しかし、評価制度に対する不信感は、このエンゲージメントを大きく下げる要因となります。自分がどれだけ努力しても正当に評価されないと感じれば、モチベーションは下がり、会社への信頼も薄れてしまうでしょう。逆に、納得感のある評価制度は、従業員のやる気を引き出し、組織全体の活力を高める強力なツールとなります。
公正な評価による離職率の低下が求められる
労働人口の減少に伴い、優秀な人材の確保と定着は企業にとって死活問題となっています。特に、成果を出している優秀な社員ほど、自分の市場価値を正しく理解しており、不当な評価に対して敏感です。
もし、自社での評価に納得できなければ、より正当に評価してくれる他社へと転職してしまう可能性が高まります。公正で透明性の高い評価制度を整えることは、優秀な人材を繋ぎ止め、離職率を低下させるための重要な経営戦略の一つと言えます。
相対評価と絶対評価の基本的な違い
人事評価制度を見直すにあたって、まずは「相対評価」と「絶対評価」という二つの基本的な考え方を正しく理解しておく必要があります。これらは評価の基準となる「モノサシ」が根本的に異なります。
項目 | 相対評価 | 絶対評価 |
評価の基準 | 集団内での順位や比較 | 個人の目標達成度や能力 |
分布の制限 | あり(S評価は○%まで等) | なし(全員S評価も可能) |
メリット | 評価差が明確、人件費管理が容易 | 納得感が高い、個人の成長を促せる |
デメリット | 不毛な競争を生む可能性がある、 | 目標設定の難易度に依存する、 |
向いている組織 | ベンチャーやスタートアップ企業 、 | 成熟したビジネスモデルを持つ組織 |
支援実績1,600社超の組織開発コンサルタントであり、上場企業の事業成長を牽引してきた弊社代表・深石が、
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相対評価は他者との比較で評価が決まる
相対評価とは、あらかじめ決められた配分比率に従って、集団内での順位付けを行う評価手法です。例えば、「S評価は上位10%、A評価は次の20%、B評価は…」といったように、全体の評価分布が事前に設定されています。
そのため、個人のパフォーマンスがどれだけ優れていても、周囲のレベルがさらに高ければ低い評価になることがあります。学校の成績表でいうところの「偏差値」や「順位」に近い考え方と言えるでしょう。
絶対評価は個人の目標達成度で評価が決まる
一方、絶対評価とは、あらかじめ設定された目標や基準に対して、個人がどれだけ達成できたかを評価する手法です。他者との比較ではなく、あくまで「基準をクリアしたかどうか」で判断されます。
そのため、極端な例を挙げれば、全員が目標を達成すれば全員が最高評価を得ることも可能ですし、逆に全員が未達成なら全員が低評価になることもあり得ます。資格試験の合否判定のように、一定の点数を超えれば合格という仕組みに近いイメージです。
評価の基準と人件費管理の考え方が異なる
この二つの手法の最大の違いは、評価基準の所在と人件費管理への影響にあります。相対評価は集団内での比較が基準となるため、評価結果の分布がコントロールしやすく、人件費の予算管理が容易であるという特徴があります。
これに対し、絶対評価は個人の達成度が基準となるため、評価結果の分布が予測しづらく、場合によっては人件費が予算を上回るリスクも考慮しなければなりません。この違いを理解した上で、自社の経営方針に合った制度を選択することが重要です。
相対評価のメリットとは?
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かつて多くの日本企業で採用されていた相対評価ですが、現在でも根強く支持されるには理由があります。特に組織運営の安定性や効率性を重視する場合、相対評価にはいくつかの明確なメリットが存在します。ここでは、相対評価を導入することで得られる主な利点について解説します。
人件費の予算管理がしやすい
相対評価の最大のメリットは、人件費のコントロールが非常に容易である点です。事前に「S評価は全体の○%、A評価は○%」と枠を決めておくため、賞与や昇給の原資がどれくらい必要になるかを正確に予測することができます。経営計画に基づいて人件費予算を厳格に管理したい企業や、利益率の変動を抑えたい企業にとっては、非常に合理的で扱いやすい制度と言えるでしょう。
社員間の競争意識を高めやすい
相対評価では、より高い評価を得るためには周囲よりも優れた成果を出す必要があります。この仕組みは、社員間に自然な競争意識を生み出し、組織全体のパフォーマンスを引き上げる効果が期待できます。特に営業部門など、個人の成果が数字で明確に表れやすく、競争がプラスに働く職種や組織風土においては、切磋琢磨する環境を作るための有効な手段となり得ます。
評価者の負担が比較的小さい
評価を行う上司やマネージャーにとっても、相対評価は運用しやすい側面があります。絶対評価のように一人ひとりの目標設定や達成基準を細かくすり合わせる必要がなく、集団内での順位付けを行うだけで評価が完了するためです。また、評価結果に対する説明も「今回は他のメンバーの成績がさらに良かったため」といった相対的な理由付けが可能であり、心理的な負担も比較的軽くなる傾向があります。
相対評価のデメリットと注意点
メリットがある一方で、相対評価には現代の働き方に合わないとされるデメリットも存在します。特に個人の心理面やモチベーションに与える影響については、導入前に十分に考慮しておく必要があります。ここでは、相対評価が抱えるリスクや注意点について詳しく見ていきましょう。
個人の成長や努力が評価されにくい
相対評価の構造的な問題として、個人の努力や成長が必ずしも評価に直結しないという点が挙げられます。例えば、前期よりも売上を大幅に伸ばしたとしても、周囲のメンバーがそれ以上に成果を出していれば、評価は変わらないか、あるいは下がってしまうことさえあります。「昨年の自分を超えた」という個人の成長実感と、会社からの評価にズレが生じやすく、これがモチベーション低下の大きな原因となることがあります。
従業員の過度な競争を招く恐れがある
適度な競争は組織を活性化させますが、行き過ぎた競争は弊害を生む可能性があります。相対評価では、同僚が良い成果を出すことが自分の評価を下げる要因になり得るため、チーム内での足の引っ張り合いや、情報の囲い込みが発生するリスクがあります。「隣の席の人はライバル」という意識が強くなりすぎると、チームワークや協力体制が損なわれ、組織全体の生産性を下げる結果にもなりかねません。
優秀な人材が不当に低評価を受けるリスク
優秀な人材が集まっている部署やチームでは、相対評価の弊害が顕著に現れます。全員が高いパフォーマンスを発揮していても、仕組み上必ず誰かには低い評価をつけなければならないからです。ハイレベルな環境で揉まれて成果を出しているにもかかわらず、相対的に下位と評価されてしまえば、その人材は不満を抱き、より正当に評価される場所を求めて流出してしまう可能性が高くなります。
絶対評価のメリットとは?
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近年、多くの企業が相対評価から絶対評価へとシフトしている背景には、人材育成や組織活性化への期待があります。個人の成果にフォーカスする絶対評価は、従業員の心理的な満足度を高める上で大きな効果を発揮します。ここでは、絶対評価を導入することで得られる具体的なメリットについて解説します。
従業員の納得感を得やすい
絶対評価の最大のメリットは、評価に対する納得感を得やすいことです。あらかじめ設定した目標を達成できたかどうかが評価の基準となるため、評価の理由が明確であり、ブラックボックス化しにくい特徴があります。「何をすれば評価されるのか」がクリアになっている状態は、従業員にとって安心感があり、結果に対する納得度も高まります。上司からのフィードバックも具体的になり、信頼関係の構築にも寄与するでしょう。
個人の成長を促しやすい
絶対評価は、過去の自分や設定された目標との対比で評価が行われるため、個人の成長に焦点を当てやすい制度です。「このスキルを習得すれば評価が上がる」「この目標を達成すれば昇給する」という道筋が見えることで、従業員の自律的な学習やスキルアップへの意欲が刺激されます。他者との比較ではなく、自己研鑽に集中できる環境は、専門性を高めたい人材やキャリアアップを目指す人材にとって非常に魅力的です。
組織目標と個人目標を連携させられる
絶対評価を適切に運用することで、会社の目標と個人の目標をリンクさせることができます。会社のビジョンや戦略を達成するために必要な行動を個人の目標として設定し、その達成度を評価することで、組織全体のベクトルを合わせることが可能になります。社員一人ひとりが「自分の仕事が会社の成長にどう貢献しているか」を実感しやすく、組織の一体感や目的意識の醸成にも繋がります。
絶対評価のデメリットと注意点
メリットの多い絶対評価ですが、導入すればすべてが解決するわけではありません。運用には高度なマネジメントスキルや仕組み作りが求められ、失敗するとかえって不公平感を生むリスクもあります。ここでは、絶対評価を導入する際に直面しやすい課題やデメリットについて解説します。
評価基準の設定と運用が難しい
絶対評価を成功させるための最大の難関は、公平で納得感のある目標設定と評価基準の設計です。業務内容や難易度が異なる社員一人ひとりに対して、適切なハードルの目標を設定するのは容易ではありません。目標が低すぎれば全員が高評価になってしまい、高すぎればモチベーションを削いでしまいます。部署や職種による有利不利が出ないよう、全社的な基準の調整やキャリブレーション(評価調整会議)を綿密に行う必要があります。
評価者によって評価にばらつきが出やすい
絶対評価は、評価者である上司のマネジメント能力に依存する部分が大きくなります。評価基準の解釈が上司によって異なると、「あの部署の上司は甘いから評価が高い」「うちの上司は厳しすぎて評価が低い」といった不公平感が生まれてしまいます。このような「評価者エラー」を防ぐためには、評価者に対する研修を徹底し、評価基準の目線合わせを定期的に行うなど、継続的なメンテナンスが欠かせません。
人件費が高騰する可能性がある
先述の通り、絶対評価では全員が良い成果を出せば、全員に高い評価と報酬を与えるのが原則です。業績が良い時は問題ありませんが、会社の業績が芳しくない状況でも人件費が高止まりするリスクがあります。そのため、原資の配分ルールを工夫したり、業績連動型の評価制度にするなど、人件費が経営を圧迫しないような仕組みづくりをセットで検討しておく必要があります。
自社に合う評価制度を選ぶための判断基準
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相対評価と絶対評価、どちらにも一長一短があり、一概にどちらが優れているとは言えません。重要なのは、自社の現在の状況や目指す組織像にマッチしているかどうかです。ここでは、自社に最適な評価制度を選ぶために考慮すべき三つの判断基準について解説します。
企業の成長フェーズや組織文化で判断する
企業の成長フェーズによって、求められる評価制度は異なります。創業期や急成長期で、個人の突破力や成果を最大限に引き出したい場合は、成果主義的な要素を取り入れた絶対評価が適している場合が多いでしょう。
一方、安定成長期や成熟期で、組織の秩序や効率的な運営を重視する場合は、相対評価による管理が機能しやすい面もあります。また、「チームワークを大切にする」のか「個の競争を促す」のか、自社のカルチャーとの親和性も重要な要素です。
従業員に競争と協調のどちらを求めるか
評価制度は、会社からの「こう働いてほしい」というメッセージでもあります。もし、営業成績などの数字を競い合わせ、トッププレイヤーを育成したいのであれば、競争原理が働く相対評価の要素を残すのも一つの手です。
逆に、ノウハウの共有や部門間の連携を強化し、組織としての総合力を高めたいのであれば、協力行動が評価されやすい絶対評価をベースにするのが望ましいでしょう。経営戦略として、どちらの行動様式を優先するかを明確にすることが大切です。
評価制度をハイブリッドで運用する選択肢
実は、相対評価と絶対評価は二者択一ではありません。多くの企業では、両者のメリットを組み合わせたハイブリッド型の運用を取り入れています。
例えば、基本給に直結する能力評価や行動評価は「絶対評価」で行い、納得感と育成を重視する一方で、賞与の原資配分には「相対評価」を用いて人件費をコントロールするといった方法です。このように、目的や対象項目に応じて使い分けることで、それぞれの欠点を補うことができます。
新しい評価制度を導入する際の3つの手順
自社に合う評価制度の方針が決まったら、次は具体的な導入プロセスへと進みます。制度設計から運用開始までは時間がかかりますが、丁寧な手順を踏むことが成功への近道です。最後に、新しい評価制度をスムーズに導入するための三つのステップを紹介します。
手順1: 評価制度の目的と方針を明確にする
まずは、「なぜ評価制度を変えるのか」「新しい制度で何を実現したいのか」という目的を言語化することから始めます。「社員のモチベーション向上」「公正な処遇」「人材育成」など、キーワードを挙げ、経営層と人事の間で認識を統一しましょう。この目的がブレていると、後の詳細設計で迷走したり、従業員への説明で説得力を欠いたりする原因になります。目指すべきゴールを明確に定めることが、制度改革の第一歩です。
手順2: 会社の戦略や方針に連動した評価項目と基準を設計する
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次に、具体的な評価シートや評価基準の作成に取り掛かります。どのような行動や成果を評価するのか(評価項目)、どのレベルに達したらS評価やA評価とするのか(評価基準)を細かく定義します。
この段階では、現場のマネージャーの意見もヒアリングし、実務に即した内容にすることが重要です。あまりに複雑すぎる制度は現場の負担になるため、運用可能な範囲でシンプルに設計することを心がけましょう。
「OGSコンサルティング株式会社の調査(経営者・管理職600名が回答)では、『経営戦略と現場の目標・実行に整合性・一貫性がない』企業ほど業績が伸び悩む傾向が判明しています。評価制度の見直しは、この『戦略整合性』を高めるための最重要施策なのです。」
手順3: 従業員への説明と評価者研修を実施する
制度が完成したら、全社員に向けた説明会を実施し、変更の意図や内容を丁寧に伝えます。特に評価される側である従業員の不安を取り除くことが大切です。それと同時に、評価を行う管理職向けに「評価者研修」を必ず実施してください。新しい基準をどう解釈し、どう部下にフィードバックするかをトレーニングすることで、評価のバラつきを防ぎ、制度の形骸化を防止することができます。
まとめ
相対評価と絶対評価の違いやメリット・デメリット、そして導入に向けたポイントについて解説しました。
この記事の要点を振り返ります。
・相対評価は人件費管理がしやすく競争を生むが、納得感や成長意欲を削ぐリスクがある
・絶対評価は納得感が高く人材育成に適しているが、基準設定や運用に手間がかかる
・どちらか一方だけでなく、目的に応じて両者を組み合わせるハイブリッド運用も有効
評価制度は単なる査定のツールではなく、社員と会社の成長をつなぐ重要なメッセージです。自社のフェーズや文化に合った制度を構築し、社員が生き生きと働ける環境を整えていきましょう。
相対評価と絶対評価、どちらが自社に適しているかの判断は非常に重要です。OGSコンサルティングは、形式的な当てはめではなく、貴社の文化やフェーズに最適な「納得感ある評価基準」を設計いたします。評価の偏りを防ぎ、社員の意欲を最大化させる実戦的な仕組みづくりを徹底サポートします。
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