人事戦略とは?策定の5ステップとフレームワーク・企業事例を解説


人事戦略とは、経営目標を達成するために人材資源を最適化する計画のことです。この記事では人事戦略の定義から、具体的な作り方の5つの手順、役立つフレームワークをわかりやすく解説します。経営に貢献する戦略立案のヒントが満載です

人事戦略とは?なぜ経営戦略に不可欠なのか?

企業が成長を続けるためには、優れた商品やサービスだけでなく、それを生み出し支える「人」の力が欠かせません。人事戦略とは、まさにその力を最大化するための設計図といえます。ここではまず、言葉の定義や経営における位置づけ、そしてなぜ今これほどまでに重要視されているのかを整理していきましょう。

経営目標を実現するための人材マネジメント

人事戦略を一言で表すと、企業の経営戦略を実現するために、人財というリソースをどのように確保・育成・配置・活用するかを定めた中長期的な方針のことです。単なる採用計画や研修スケジュールの集合体ではありません。例えば、会社が「3年後に海外売上比率を50%にする」という経営戦略を掲げたとします。この場合の人事戦略は、グローバルに活躍できる人財を何人採用し、既存社員にどのような語学・異文化理解研修を行い、現地の評価制度をどう整備するかといった具体的なシナリオになります。つまり、経営のゴールから逆算して描かれる「人と組織のロードマップ」こそが人事戦略の本質なのです。

「戦略人事」との関係性と違い

人事戦略について調べていると、「戦略人事」という言葉によく出会うことでしょう。この二つは非常に似ていますが、視点の置き方に違いがあります。人事戦略が「具体的な計画や施策の中身」を指すのに対し、戦略人事は「人事を経営の中核に据える考え方やあり方」そのものを指します。従来の人事が給与計算や勤怠管理などの管理業務(オペレーション)を中心としていたのに対し、戦略人事は経営パートナーとして事業成長に直接貢献する役割を担います。

 

項目従来の人事(管理・オペレーション)戦略人事(経営パートナー)
役割従業員の管理、労務対応経営戦略の実現支援
視点短期的・守り中長期的・攻め
指標コスト削減、業務効率業績向上、組織変革
対象現在の従業員未来に必要な人財も含めた全体

 

上記のように整理するとわかりやすいでしょう。戦略人事というスタンス(あり方)を持って策定される具体的なプランが、人事戦略であると理解してください。

人的資本経営の広がりによる重要性の高まり

近年、投資家や市場は企業の将来性を評価する際、財務情報だけでなく非財務情報である「人財」に注目するようになりました。これが「人的資本経営」のトレンドです。人財をコストではなく、投資すれば価値を生む「資本」と捉える考え方です。日本でも2023年3月期決算から有価証券報告書を提出する上場企業(約4,000社)に対して人的資本情報の開示が義務化されるなど、その動きは加速しています。これに伴い、企業は「うちは人財をどう活用して企業価値を高めていくか」を社内外に明確に説明する必要が出てきました。人事戦略は単なる社内向けの計画書ではなく、株主や求職者に対する企業の競争優位性を示す重要なメッセージとしての役割も担うようになっています。

参考:https://www.kaonavi.jp/dictionary/jintekishihonkaiji-gimuka/

人事戦略を策定する具体的な手順とは?


概念が理解できたところで、次は実際に手を動かして戦略を作るプロセスに入りましょう。いきなり施策を書き出すのではなく、正しい順序で思考を積み上げることが、説得力のある戦略を作る鍵です。ここでは大きく4つのステップに分けて解説します。

経営ビジョンと現状のギャップを把握する

最初に行うべきは、ゴールの確認と現在地の把握です。経営理念や中期経営計画書を読み込み、経営陣へのヒアリングを通じて「3〜5年後に会社がどうなっていたいか」を具体的にイメージします。次に、現状の組織データを分析します。従業員の年齢構成、スキルレベル、離職率、エンゲージメントスコアなどの定量データに加え、現場の不満や課題感といった定性情報も集めましょう。理想の未来と現在の姿を比較したときに見えてくる「差分(ギャップ)」こそが、人事戦略で解決すべき課題となります。

求める人物像と必要な要件を定義する

課題が明確になったら、それを解決するために「どのような人財が必要か」を定義します。これを「人材要件」と呼びます。「コミュニケーション能力が高い人」といった曖昧な表現ではなく、より具体的に言語化することが重要です。例えば「新規事業を立ち上げるための、0から1を生み出す企画力と失敗を恐れない行動力を持つ人財」や「既存事業の効率化を推進するための、業務プロセス改善経験とデータ分析スキルを持つ人財」といった具合です。この定義が具体的であるほど、後の採用や育成のズレを防ぐことができます。

採用・育成・配置の具体策に落とし込む

必要な人財像が決まれば、次は「どうやってその人財を確保するか」というHowの部分を考えます。ここには主に3つのアプローチがあります。1つ目は外部から獲得する「採用」、2つ目は今いる社員を育てる「育成」、3つ目は適材適所に人を動かす「配置」です。

 

アプローチ具体的な施策例
採用ダイレクトリクルーティング導入、リファラル採用強化、採用ブランディングの見直し
育成次世代リーダー研修、スキルアップ支援制度、1on1ミーティングの定着化
配置社内公募制度の導入、ジョブローテーション、抜擢人事

 

これらの施策を単独で行うのではなく、相互に連携させることがポイントです。例えば、新しいスキルを持つ人財を採用しつつ(採用)、そのスキルを既存社員に伝播させる仕組みを作る(育成・配置)といった複合的なプランを練りましょう。

KPIを設定しPDCAを回す仕組みを作る

素晴らしい戦略も、実行されなければ絵に描いた餅です。施策のやりっぱなしを防ぐために、必ず成果指標(KPI)を設定します。採用数や研修実施回数といった「行動指標」だけでなく、離職率の低下幅、エンゲージメントスコアの向上、管理職への昇格率といった「結果指標」も設定しましょう。そして、半期や四半期ごとに進捗を確認し、計画通りに進んでいなければ軌道修正を行うPDCAサイクルをあらかじめ設計しておくことが、戦略の実効性を高めます。

戦略立案に役立つフレームワークとは?

ゼロから課題を洗い出し戦略を構築するのは大変な作業ですが、先人の知恵である「フレームワーク」を活用すれば、思考を効率的に整理できます。ここでは人事戦略の策定で特によく使われる3つのフレームワークを紹介します。

内部・外部環境を整理するSWOT分析

SWOT分析は、自社の内部環境と外部環境を4つの要素で整理する手法です。「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の頭文字を取っています。

・強み:自社の優秀な技術力、高い定着率など
・弱み:マネジメント層の不足、採用ブランドの低さなど
・機会:業界全体の市場拡大、働き方改革によるリモートワーク普及など
・脅威:競合他社の採用攻勢、法改正によるコスト増など

これらを書き出すことで、自社が置かれている状況を客観的に俯瞰できます。さらに「強み×機会」で積極的な採用戦略を立てたり、「弱み×脅威」でリスク回避の守りの施策を考えたりと、戦略の方向性を決めるクロス分析へと繋げられます。

戦略の方向性を導き出す3C分析

マーケティングで有名な3C分析ですが、人事戦略、特に採用市場における自社の立ち位置を把握するのに役立ちます。「Customer(市場・顧客=求職者や従業員)」「Competitor(競合他社)」「Company(自社)」の3つの視点で分析します。

・Customer:求職者は何を求めているか?(給与、やりがい、柔軟な働き方など)
・Competitor:競合他社はどんな待遇やキャリアパスを提示しているか?
・Company:自社が提供できる独自の価値(EVP)は何か?

競合が真似できず、かつ求職者が求めている自社の魅力を見つけ出すことで、差別化された採用戦略や定着施策を立案することができます。

組織のソフトとハードを分析する7Sモデル

マッキンゼーが提唱した7Sモデルは、組織の全体像を把握するのに最適です。組織を構成する要素を「ハードの3S(戦略、組織構造、システム)」と「ソフトの4S(価値観、スキル、人材、スタイル)」に分類します。

・ハードの3S:変更が比較的容易で、経営陣がコントロールしやすい要素(制度やITシステムなど)
・ソフトの4S:人の内面に関わり、変えるのに時間がかかる要素(社風や能力など)

人事戦略ではハード面の制度変更に目がいきがちですが、それがソフト面の社風や価値観と合致していなければ機能しません。このモデルを使うことで、制度と風土の整合性が取れているかを確認できます。

 

策定時に陥りやすい失敗と対策は?

 

最後に、人事戦略を策定・実行する際によくある落とし穴と、それを避けるためのポイントをお伝えします。どれほど立派な戦略書ができても、現場で運用されなければ意味がありません。

現場の声を無視した戦略にならないようにする

経営陣の意向ばかりを気にして作られた戦略は、往々にして現場の実態と乖離します。「理想はわかるが、現場は忙しくてそんな研修をやっている暇はない」「新しい評価制度が複雑すぎて使いこなせない」といった反発を招かないよう、策定プロセスには現場のマネージャーやキーパーソンを巻き込むことが重要です。初期段階からヒアリングを行ったり、プロジェクトメンバーに現場社員を加えたりすることで、「自分たちが作った戦略だ」という当事者意識を持ってもらうことができます。

手段が目的化しないよう成果を検証する

「流行りのジョブ型雇用を導入すること」や「タレントマネジメントシステムを入れること」自体が目的になってしまうケースがよく見られます。これらはあくまで手段であり、目的は経営課題の解決です。常に「この施策を行うことで、経営のどの数字に貢献するのか?」「どのような組織状態を作りたいのか?」という原点に立ち返る癖をつけましょう。手段が目的化すると、導入した瞬間に満足してしまい、その後の運用がおろそかになりがちです。導入後の効果検証までをセットで考えることが大切です。

 

まとめ

本記事では、経営戦略を実現するための人事戦略について、その定義から作り方、事例までを解説してきました。この記事の要点を振り返ります。

・経営目標と現状のギャップを埋めることが人事戦略の本質である
・「採用」「育成」「配置」を個別の点ではなく、連携した線として設計する
・フレームワーク(SWOT、3C、7S)を活用し、客観的な視点で分析を行う
・策定プロセスに現場を巻き込み、手段が目的化しないよう成果にこだわる

人事戦略は一度作って終わりではありません。経営環境の変化に合わせて柔軟に見直し、進化させ続ける必要があります。まずは自社の経営計画を改めて読み返すところから、最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

人事戦略の策定には、現状の正確な把握と適切なフレームワークの活用が欠かせません。しかし、自社に最適な戦略をゼロから構築するのは非常に労力がかかります。そこで、効果的な人事戦略の推進に向けた具体的なステップや、役立つ最新のノウハウをまとめた資料をご用意しました。組織の成長を加速させるヒントが満載ですので、ぜひご活用ください。

 



お問い合わせ – OGSコンサルティング株式会社

本質的な組織創りにスグ活用できる資料を
無料でダウンロード!

お問い合わせContact

  • 各種コンサルティングや研修に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

  • まずは相談してみる