人事評価制度の見直し手順とは?目的や成功のポイント・事例を解説

人事評価制度が現場の実態と合わなくなってきたと悩んでいる方に向けて、この記事では評価制度見直しの具体的なステップと成功のポイントを解説します。読み終わると、自社に最適な評価制度を構築し、従業員のモチベーションを向上させるための具体的なアクションが明確になるでしょう。

 

結論からお伝えすると、評価制度の見直しにおいて大事なのは、経営戦略との連動と従業員への丁寧な周知と言えます。現状の課題を正しく把握し、組織全体が納得できる評価基準を作ることが求められます。

 

人事評価制度の見直しが求められる背景

 

社会情勢が激しく変化する現代において、企業が持続的に成長するためには、時代の潮流に合わせた組織基盤のアップデートが重要です。従来のやり方に固執せず、現状のビジネスモデルや求める組織像に適した仕組みへ移行する必要性が高まっています。

評価制度が形骸化する主な原因

評価制度が形骸化してしまう背景には、制度と実務のズレが存在すると考えられます。過去に作られた基準が、現在の業務内容や会社が求める人物像に合致していないケースが多いです。定期的なメンテナンスを行わないまま長期間運用すると、評価基準が曖昧になってしまいます。

 

その結果、評価者の主観に頼る部分が大きくなり、本来の目的を果たせなくなると言えるでしょう。従業員が「何を基準に評価されているのかわからない」と感じたとき、制度は単なる形だけのものに変わってしまいます。環境の変化に合わせて、評価項目をアップデートしていくことが大事です。

見直しを先送りすることで生じるリスク

制度の不具合を放置していると、組織にさまざまな悪影響をもたらす恐れがあります。評価への納得感が低下することで、従業員のモチベーションが大きく下がるからです。正当な評価が得られないと感じた優秀な人財は、次第に他社へ流出してしまう可能性が高まります。

 

また、不公平な評価が続くと、社内の人間関係やチームワークにも亀裂が入りかねません。組織の生産性を維持するためにも、不満が大きくなる前に制度を見直すことが重要と言えます。定期的に現場の声を聞き、制度のほころびを早期に発見する体制づくりが求められます。

 

リスクの要因組織に与える具体的な影響
評価基準の曖昧さ何を目標にすべきか分からず、従業員の意欲が低下する
評価結果のフィードバック不足不公平感が生じ、改善行動につながらず、成長機会が失われる
時代や実態とのズレ適切に評価されない優秀な人財が他社へ流出してしまう

 

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人事評価制度を見直すことで得られるメリット

人事評価制度を自社の現状に合わせて刷新することは、企業の競争力を高める原動力になり得ます。制度の見直しは単なる処遇の決定に留まらず、社内コミュニケーションの活性化や、組織全体の力を最大化させるための前向きな変化をもたらします。

従業員の納得感とエンゲージメントの向上

明確な評価基準を提示することで、何を頑張れば評価されるのかが従業員に伝わりやすくなります。評価の透明性が高まるため、自身の評価結果に対する納得感も得やすくなるでしょう。自分が正当に評価されていると実感できれば、仕事に対する責任感も強まります。

 

結果として、従業員の仕事への意欲や、会社に貢献したいというエンゲージメントの向上が見込めます。一人ひとりが前向きに業務に当たる姿勢は、組織全体の活気につながると言えるでしょう。納得感のある評価は、個人の成長を促すための重要な土台となります。

経営戦略と現場の行動方針の連動

会社の目指す方向性と評価基準を一致させると、経営戦略を現場の行動に落とし込みやすくなります。会社が求める行動や成果を高く評価する仕組みを作れば、従業員は自然とその方向へ向かって努力するからです。組織全体でベクトルを合わせるために、評価制度は有効な手段の一つと言えます。

 

経営層と現場の間にある認識のズレを埋めるためにも、評価基準の見直しは役立ちます。全員が一つの目標に向かって進むことで、業績の向上や事業成長のスピードアップが期待できます。評価制度は、単なる査定の道具ではなく、組織を導く羅針盤としての役割を持っています。

人事評価制度を見直す具体的なステップ

制度の見直しを円滑に進めるためには、全体のロードマップを把握し、各フェーズで丁寧に合意形成を図ることが重要です。全社的な協力を仰ぎながら、確実な手順を踏んでプロジェクトを進めましょう。

 

ステップの段階実施すべき具体的なアクション内容
現状分析と課題抽出

アンケートや面談を実施し、
既存制度に対する不満や問題点を把握する

方針策定と基準設計経営戦略に基づいた基本方針を定め、
客観的でわかりやすい評価項目を作る
周知と運用体制構築従業員への説明会や評価者研修を実施し、
継続的に改善できる体制を整える

 

現状分析と自社課題の洗い出し

まずは、現在の制度に対してどのような不満や課題があるのかを抽出する作業から始めます。従業員へのアンケートや面談を通じて、現場のリアルな声を拾い上げることが大切です。あわせて、経営陣が求める人物像と現場の実態にどのようなギャップがあるのかを確認しておきましょう。

 

この段階で課題を正確に把握できていないと、後の設計が的外れなものになってしまいます。客観的なデータや意見を集め、自社が抱える根本的な問題を浮き彫りにすることが求められます。課題の解像度を上げることが、より良い制度構築への第一歩と言えるでしょう。

 

アンケートでは「評価制度に満足していますか」と聞いても、改善につながる情報は得られにくくなります。論点ごとに設問を分けることをおすすめします。

 

確認したい論点従業員アンケートの設問例
基準の認知自分がどのような基準で評価されているかを説明できますか
納得感直近の評価結果について、その理由を理解できましたか
対話の量期の途中で、上司と目標について話す機会はありましたか
処遇との連動評価結果が給与や賞与にどう反映されるか分かりますか

 

回答が低い設問が、そのまま見直しの優先順位になります。例えば「基準の認知」だけが低いのであれば、制度そのものより周知の方法に課題があると判断できます。

新しい基本方針と評価基準の策定

抽出した課題をもとに、新しい評価制度の基本方針と具体的な目的を決定していきます。成果を重視するのか、能力の向上を評価するのかなど、会社としてのスタンスを明確にする必要があります。方針が決まったら、それに基づいて具体的な評価項目や評価基準を設計する段階に進みます。

 

ここでは、誰が見ても分かりやすく、客観的に判断できる基準を作ることがポイントとなります。複雑すぎる制度は現場の負担を増やすため、シンプルで運用しやすい設計を心がけることが大事です。また、給与や昇進などの処遇とどのように連動させるかも、あわせて検討しておきましょう。

 

評価基準は、達成度のラインを数値で置くと判断がぶれにくくなります。以下は営業職の評価シートの例です。

 

評価項目80%ライン100%ライン120%ライン
新規顧客の獲得件数8件10件12件
顧客満足度アンケート75点80点90点
新人育成マニュアルの整備章立てまで完成入社3か月分を完成入社1年分を完成

 

100%ラインは、その役職で求められる役割を全うした状態に置きます。個人の100%の合計が部署の100%と一致するように設計しておくと、部署目標と個人目標の整合性が自然に取れます。

評価項目は「KGI→KSF→KPI」の順番で見出す

評価項目を決める際、既存のテンプレートから使えそうな項目を選ぶという進め方をすると、頑張っても業績が伸びない制度になりがちです。評価項目は、経営目標から逆算して導き出すという順番が重要になります。

 

具体的には、最終ゴールであるKGIを確認し、その達成に必要な要素であるKSFを分解し、KSFを測定可能な数値へ変換したKPIを設定します。そのうえで、重要度の高いKPIを評価項目として採用します。

 

段階意味営業部門での例
KGI最終ゴール月間売上800万円
KSF達成に必要な要素・新規顧客の獲得強化
・既存顧客のリピート強化
・顧客単価の増加
KPIスモールゴール(数値)・月間新規60名
・リピート率30%以上
・セット商品50セット販売
評価項目KPIのうち重要度の高いもの新規顧客の獲得強化
(評価基準:10名)など

 

KSFを洗い出す際のコツは、要素を「定数」と「変数」に分けることです。市場動向や為替、季節変動のように自社ではコントロールできない要素が定数、提案件数や価値訴求の方法のように自分たちで変えられる要素が変数にあたります。

 

評価項目に定数を入れてしまうと、本人の努力ではどうにもならない要素で評価が決まることになり、納得感を大きく損ないます。見直しの際は、既存の評価項目に定数が紛れ込んでいないかを点検してみてください。

 

なお、評価項目の数は絞り込むことが大切です。項目が多すぎると評価者の負担が増えるだけでなく、被評価者もどこに力を注ぐべきかが分からなくなります。ひとつの目安として、評価項目が5つを超える場合は本当に必要な項目かどうかを再検討することをおすすめします。

 

従業員への周知と運用体制の構築

新しい制度が完成したら、従業員に向けて丁寧に説明を行い、理解を深めてもらうプロセスに入ります。どれほど優れた制度であっても、現場がその内容や意図を知らなければ効果を発揮しないからです。制度の目的や変更点について、時間をかけて伝える場を設けることが重要と言えます。

 

さらに、評価者となる管理職向けの研修を実施し、運用ルールや面談の進め方を浸透させることが求められます。運用がスタートした後も、定期的に現場の声を聞きながら微調整を行っていく姿勢が欠かせません。

 

一度作って終わりではなく、常に改善を続ける運用体制を整えておくことが、制度を定着させる上で重要です。

 

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評価制度の見直しを成功させるポイント

新制度を絵に描いた餅に終わらせず、現場に深く定着させるためには、いくつかの重要な勘所を押さえる必要があります。運用面での負担を考慮した持続可能な設計を意識し、評価を行う管理職の意識改革を促すことが、制度を成功に近づける重要な要素となります。

 

成功のためのポイント具体的な工夫と期待できる効果
多角的な視点の導入定量評価と定性評価を組み合わせることで、
一部の主観に偏らない公平な評価を実現する
プロセス評価の重視成果に至るまでの努力や挑戦を評価し、
中長期的な人財育成とモチベーション向上を促す
評価者間のすり合わせ評価基準の認識を統一する場を設け、
評価者によるばらつきを最小限に抑える

 

 

公平性を担保する仕組みづくり

特定の評価者の主観や好みに偏らないよう、客観的な評価基準を設けることが重要となります。数値で測れる定量的な評価だけでなく、行動や姿勢を測る定性的な評価をバランスよく組み合わせると良いでしょう。複数の視点を取り入れることで、多角的な評価が可能になります。

 

たとえば、上司だけでなく同僚や部下からの視点も交える手法も、公平性を高める一つの方法です。評価にばらつきが出ないよう、評価者同士ですり合わせを行う仕組みを作ることも求められます。誰もが「正しく見てもらえている」と感じられる環境づくりが、制度の信頼性を支える土台になります。

部署間の難易度は「目標設定時」と「評価会議」の2回で調整する

見直しの現場でよく起こるのが、「営業部は達成しやすく、管理部は達成しにくい」といった部署間の難易度のばらつきです。前提として、役割も責任も業務内容も異なる部署の間に、完全に公平な共通のモノサシは存在しません。

 

そこで有効なのが、調整のタイミングを2か所に設けるという考え方です。期のスタート時点で目標の100%ラインの難易度をすり合わせ、期末のゴール時点では二次評価や評価会議の場でもう一度ばらつきを調整します。

 

入口と出口の両方でチェックする仕組みにしておくと、「完璧な基準を最初に作らなければならない」という制度設計の重圧が下がり、見直しに着手しやすくなります。

成果だけでなくプロセスを評価に組み込む

結果の数字だけを評価の対象にすると、従業員が短期的な成果のみを追い求める危険性があります。チームへの貢献度や、目標達成に向けた工夫など、成果に至るまでのプロセスもしっかりと評価することが大事です。失敗を恐れずにチャレンジした姿勢を認めることで、イノベーションが生まれやすい土壌が育つでしょう。

 

プロセスを評価することは、中長期的な人財育成の観点からも非常に有効と言えます。結果が出なかった場合でも、どの行動が良くてどこに改善の余地があったのかをフィードバックしやすくなるからです。目先の数字だけでなく、従業員の成長の軌跡を丁寧に見守る姿勢が求められます。

企業における人事評価制度見直しの事例

自社に適した制度を設計する上で、他社の具体的な改革プロセスや成功体験は非常に有益な判断材料となります。実際の導入アプローチや直面した課題の解決策を学ぶことで、自社が進むべき方向性をより鮮明にイメージできるようになるでしょう。

感覚的な評価を脱却し「自走する組織」へ変革した企業の事例

オギハラ食品株式会社では、かつて給料を「感覚」で決めており、優秀なスタッフが「評価基準や会社の方向性が見えない」と相次いで離職する課題に直面していました。

過去に形だけの評価制度で失敗した経験もあり、同社は管理のための制度ではなく、自社の理念に基づいた独自の育成スタイルの確立へ舵を切ります。

社長自らが行動指針を率先して体現し、丁寧な面談を通して上長と部下が深く向き合う仕組みを構築。理念に基づく行動指針を評価軸に据え、面談で目標と振り返りを共有することで、社内コミュニケーションが大きく改善され、メンバーが明確な目標へ向かって主体的に動き出すなど、組織全体が自走し始めるというリアルな成果を上げています。

【関連記事】オギハラ食品株式会社 – OGSコンサルティング株式会社

【【社長告白】老舗食品メーカーの評価制度が復活!組織の自走力を最大化させた変革とは?】

人事評価制度見直しのまとめ

この記事の要点をまとめます。

・評価制度の形骸化は従業員の離職や意欲の低下を招くリスクがある
・経営戦略と評価基準を連動させることで組織の生産性が高まる
・現状分析から周知・運用まで段階的なステップを踏んで進める
・評価項目はKGI→KSF→KPIの順に逆算し、定数ではなく変数を設定する
・客観的な基準とプロセスの評価を組み合わせて公平性を担保する

自社に合った評価制度の見直しを進め、組織全体の成長に繋げていきましょう。

人事評価制度の見直しに関するよくある質問

最後に、評価制度の見直しを検討する際によく寄せられる質問について回答します。

Q1.評価制度の見直しはどのくらいの頻度で行うべきですか?

評価項目や評価基準は、事業戦略が変われば変わるものです。そのため、評価期間ごとに項目と基準を見直すのが基本になります。一方で、等級制度や報酬テーブルといった制度の骨格部分は頻繁に変えるものではないため、事業フェーズの転換期や組織規模が大きく変わったタイミングで点検する形が現実的です。

Q2.「評価」と「査定」は分けて考えるべきですか?

分けて考えることをおすすめします。評価は成果を判断するもの、査定は報酬を決定するものであり、目的が異なるためです。両者を分けておくと、評価期間は3か月、査定期間は6か月といった具合に、事業のスピードに合わせて柔軟に設計できるようになります。

Q3.見直しによって給与が下がる社員が出る場合はどうすればよいですか?

不利益変更にあたる可能性があるため、慎重な対応が必要です。実務上は、移行期間を設けて段階的に新制度へ寄せる、現給を一定期間保障するといった調整措置を取る企業が多く見られます。制度の変更内容と移行の考え方を事前に説明し、就業規則の改定手続きを適切に踏むことが前提となります。

Q4.現場から反発が出た場合はどう対応すればよいですか?

反発の多くは、変更そのものよりも「なぜ変えるのかが分からない」ことから生じます。現状分析の段階で集めた現場の声を、制度説明の場で「こういう課題が出ていたので、この点をこう変えました」という形で提示すると、納得を得やすくなります。設計段階から部門のリーダーを巻き込んでおく方法も有効です。

Q5.見直しを外部に依頼すべきか自社で進めるべきか迷っています。

判断の分かれ目は、自社に制度設計の経験者がいるかどうかと、運用まで担える体制があるかどうかです。外部に依頼する場合も、設計を丸ごと任せてしまうと運用段階で自社に知見が残りません。設計プロセスを社内メンバーが体験しながら進める伴走型の支援を選ぶと、見直し後の運用も自社で回しやすくなります。

 



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